
1.クリニックの概要
・院長: 男性 50歳
・標榜科目: 循環器科、内科
・所在地:東京都近郊のテナントビル2階
院長は病院勤務時代から患者さんからの評判が良く、開業前は多くの患者さんを抱えていました。開業後も患者さんやご家族に親切丁寧に接しており、その意向は職員にも浸透していて目立った問題点はありません。清掃も行き届いており、また患者数が多くないことから待ち時間もほとんどありません。
開業時、院内のレイアウトを決める際には医療機関に実績のある設計・施工業者と契約し入念な打合せを行い、バリアフリー構造やお手洗いなど患者さんの視点にたった配慮がなされています。 入口ドアと窓に施設名・診療科目・診療日時などをはじめ、診療所の基本情報をカッティングシートで表示していますが、看板などにはあまり資金をかけず、表通りから入口が少し認識しづらいのではと思われます。また、ホームページを開設しているものの基本情報を掲載しているのみです。
2. 相談事項と問題点の発見
開業して1年半経ちますが、1日の患者数は当初計画の40人の半分20人しかないため、開業当初用意した運転資金も少なくなり資金繰りにも窮してきている。先日、院長は受付事務から何気なく患者さんのつぶやいた言葉を聞き、ハッとしました。
「ここに内科医院があることを先日まで知らなかった。もっと早く知っていたら良かったのに。でもこれからは遠くに行かなくてもすむよ。」 院長は、開業前に医師会の古い開業医の考えを聞く機会もあり、クリニックの広告に関しては否定的な考えをもっていました。“良い診療さえしていれば患者さんは自然とついてくる”“口コミ以外結局はあまり役立たない”という捉え方はある意味では真実かもしれませんが、開業当初という特別なステージにおいては、集患戦略が必要であるという認識に全く欠けていました。
3. コンサルティング
内科の場合、慢性疾患の患者が多いため、今まで通っていたクリニックから、新しいクリニックに替えることは、他の診療科目と比べて難しいため、替えるだけの魅力をアピールしなければなりません。しかし、既存クリニックとの「優位的な差」をしっかり出せるかというと、これもそう簡単なことではありません。開業当初の集客戦略は、次の2点にあります。
1. 開業当初は基礎的な認知度を上げて“存在を知ってもらう”ことが最も重要であること
2. 闇雲に広告費を掛けるのではなく、マーケティングを行ってポイントを絞った広報活動をすることが大切であること
そこで、まず、問診票にある「来院動機」をあらためて集計するとともに患者アンケートを実施し、患者が何を見て認知し評価しているのかを調査することとしました。
その結果、
・現在の患者の多くは家族や知り合いの紹介で来院しており、施設前看板の認識割合が思いのほか低いこと
・院長の診療内容やスタッフの対応に不満は殆ど無いこと
・循環器専門のクリニックのイメージが強いこと
・患者用駐車場の存在を知らず不満があがっていたこと
・患者でない住民にはあまり認識されていないこと
・隣接地区では遠い病院へかかっている住民が多く、不満を抱えていること
という調査結果が出ました。
4. 改善アクション
1. クリニック前の看板のリニューアルクリニック看板が茶系ベースのため認識しづらいという指摘に対応し、白・青を基調とした“医療機関をイメージさせる”色目のものに変更し、診療所入り口まで誘導するような標識を設置した。 また駐車場の案内も一新し、遠目でもPがわかる表示に改善した。
2. 標榜診療科目を工夫し、プライマリケアに万全に対応するクリニックをイメージしてもらえるよう変更をした。
3. ターゲット隣接地域に対し、「健康相談会開催のお知らせ」を新聞折り込みとポスティングで配布した。
また隣接地域との主要動線である国道に大きくロードサインを出し、クリニックの存在を強くアピールした。
4. ホームページをリニューアルし、多様な患者層に対応した。
5.まとめ
経営戦略を考えるときには様々な切り口やポイントがあり、増患のためにすべきことは多様なアプローチが考えられますが、新規開業の成否は、経営的に軌道に乗るまでのスピードにかかっています。 そのための広報活動は非常に重要な戦略の一つであり、本質と目的をしっかり考慮して実行する必要がある。広告費用についてその適正額を問う先生方は多いが、最も大切なのは金額よりもそのやり方、中身であると言えます。